2015年5月22日金曜日

HARD HEADED WOMAN / 冷たい女




HARD HEADED WOMAN/ 冷たい女

・年下の子供は年上の子供が見るものなら何でも見る。
・年上の子供は年下の子供が見るものは見ようとしない。
・女の子は男の子の見るものなら何でも見る。
・男の子は女の子の見るものは見ようとしない。
・よって大多数の支持者をつかむには、十九歳の男性に照準を定めるべし。

エルヴィス現象にはこの条件がすべて揃っていた。


サンレコードから、デビュー間もないエルヴィスのライブを聴くと分かりますが、圧倒的にボーイズが支持しているのが分かります。

やがて女性層に変わります。

現代では男性以上に女性のインパクトが強くなったがいまも大きく変わらない。


入隊中にチャートインした<冷たい女>は、ディキシー仕立ての快調なロックナンバー。
エルヴィスのロック・スピリッツが炸裂した曲だ。

よくこれだけ忙しく口が回るなと感心するほど滑らか淀みなく快走する。
ここではキングの風格が充満している。

エルヴィスにとって映画第4作にあたる、パラマウント映画第2作『闇に響く声』の挿入歌。

パラマウント・スタジオ・オーケストラをバックにニューオリンズ・ジャズ・バンドの中にロック爆弾を投げ込んだようなボーイズ好みの仕上がりは、ブライアン・セッツアーの原風景ともいえる。



頑固な女にお人好しの男の組合せは
この世の始めからトラブルの元なのさ

*そうさ、大昔からずっと変わってない
頑固な女は男の苦労の種なのさ

アダムはイヴにこう言った
「りんごの木の回りをうろつくんじゃないぞ」ってね

*2回くりかえし

サムソンはデリラににこう言った

「その汚らしい手でオレの髪に触れるな」ってね

*くりかえし

イスラエルの王様の話を知ってるかい
性悪のイゼベルをめとるまで楽しく暮らしてた

*くりかえし

オレの彼女は石のように頑固
でもいなくなったらオレは一日中粒くだろう

*くりかえし

頑固な女は男の苦労の種なのさ
ア、ハ、ハ



キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)が語るように、
当時友人との間で交わした「おい、あれ聴いたか」は
エルヴィスが何者だったのかのすべてを表現している。

歌であることをキープしながら、
縦横無尽に自分の声を楽器のように扱い、
身体を動かす。自然な発露と鋭い感性によってのみ可能となる
計算された感情へのアプローチ。

それは”発明”だ。




エルヴィスの音楽は”ボーイズ”を”ロック小僧”にした音楽だった。

没後25年を過て、なお支持される基本はそこにある。

男の子は女の子の見るものは
見ようとしないというわけにはいかないのだ。

「おんな、こどもに分かってたまるか」と
口走りながら、ボーイズは聴き続ける。

Well a hard headed woman. soft hearted man
Been the cause of trouble ever since the world began

Oh yeah, ever since the world began
A hard headed woman been the thorn in the side of man

Adam told Eve "Listen. here to me
Don't you let me catch, you mess:n 'round that apple tree

*Repeat Twice

Samson told Delilah loud and clear

'Keep your cotton-pickin' fingers out of my curly hair"

Re peat

l heard about a king who was doing swell
Till he started playing with that evil Jezebel

Re peat

l got a woman, a head like a rock I
f she ever went away I'd cry around the clock

Repeat


『ワークス・オブ・エルヴィス』には次のように紹介されています。

1957度のパラマウント映画『闇に響く声』はエルヴィス4作目の作品として同年7月2日に公開されかけたが、そのサウンドトラック・アルバムにさきがけて、まずシングルがリリースされた。クロード・デメトリアスの作詞・作曲による軽快なロックン・ロール。ところで「『闇に響く声』は原題でも分かるようにニューオーリンスが舞台になっていて、サウンドトラックもバックにオーケストラ(パラマウント・スタジオ・オーケストラ)を使ってぐっとニューオーリンズ・スタイルのジヤジーな味わいを見せているが、その展開はこのシングル・ナンバーにも取り入れられている。

ちょうどエルヴイス入隊中のヒット・チューンということになり、R&B/カントリー両チャートでもTOPI00、2位までランクアップし、同年11月にはゴールドレコードに輝いている。



2015年5月16日土曜日

監獄ロック/JAILHOUSE ROCK


監獄ロックJAILHOUSE ROCK

認知症だった母が、診察に来たドクターにこう聞きました。

「教えて。」

なにを教えて欲しいのか、自分には分かりました。
ドクターもそうだったでしょう。
「なにを?」を分からないふりをして聞きました。
母は返事しませんでした。母も分かっていたと思います。

わからないふりをして「大丈夫やで、心配ないからね」と返しましたが、
母は、なにも言いませんでした。

認知症が進む日々での切なくも残酷なやりとりでした。




ジョンレノンは、自分をパロディ化してしまったエルヴィスに近親憎悪的に失望したが、レノン自身が語っているように「エルヴィス以前にはなにもなかった」のだから、エルヴィス自身が新世界を切り開くしかなかった。しかしエルヴィスにはそれだけの野心はなかったし、「エルヴィス以前にはなにもなかった」弊害をエルヴィスは抱えていた。マネジャーのトム・パーカーの存在だ。

トム・パーカーの選択も「悪」とばかりは言えない。実際、誰もが先を読めなかった。パラマウント映画の大プロデューサー、ハル・ウォリスも契約はしたもののどう扱えばいいのか分からなかったし、後日自身のショーのゲストにエルヴィスを迎えたフランク・シナトラさえも「あんなチンピラ、すぐに人気は下がる」と言い放っていた。みんな分からなかった。

後になって、それぞれがそれぞれの立場でいろんなことを語っているが、コロンブスの卵と変わらない。

エルヴィスに野心がなかったことを責めることは過酷すぎる。なにより野心を持たない自由もある。母のために生きること、恋に生きることを責めることを誰もできない。それこそが人はそれぞれに積極的に自己主張(アサーティブ)であることを許されているのだから。これこそがロックンロールの産物であり、恩恵のひとつであり、ジョン・レノンが歌った「イマジン」に通じるものではないのか。「それを言っちゃお終いだよ、レノンさん」なのだ。

結局、エルヴィスもジョン・レノンも、どれほど遠くに行ったように見えても、なんだかんだ言っても、「家族」という束縛から逃げることはできなかった。エルヴィスはなにより家族を愛し、その抑圧から解放されるために、ドラッグやセックスに溺れたとしても、それも「戦いの季節」だったと大目に見てあげればいい。他者に迷惑をかけずに苦しんだのは本人なのだから。

キッチンドリンカーになって早死を選んだグラディスは、自殺にも似ていて、エルヴィスもグラディスに導かれるように同じような選択をした。ジョン・レノンはなぜ愛されながら憎まれたのか。それはジョン自身の父親へのあり方にも似ていて、いかなる成功も個人の胸に宿る孤独に敗れた。

戦いの季節は、それぞれの流儀で敗れることで終わった。

で、自分が言いたいのは、人はみんな死刑囚のようなものだということだ。

不安が人を苦しめるというが、「いつか死ぬ」ということほどはっきりしていることはない。長寿を祝いながら、いつ死刑台に立たされるかわからないまま、毎日孤独と向き合いながら過ごしている。なんとも奇妙な話であるが、いよいと国家予算に反映しなければならなくなってきた。これほど明確なことなのに予算化しないことがクレイジーだったのだ。

オリンピックを控えて「スポーツ庁」を設置することに反対なしで通過したが、それ以上に必要なのは「老人対策庁」だ。介護保険、後見人制度、など老人対策は行われているが、ほとんど机上の空論なのが現実で、使い勝手の悪いさは現実離れしている。

「スポーツ庁」は金儲けにつながるが、「老人対策庁」は儲からないのでアサーティブになれない。いまでは「母の日」の経済効果という始末だ。なんでもバレンタイン、ハロウィンにつぐお金が動くイベントらしい。

こういう話を聞くと、20世紀を代表するアーティストであったエルヴィスやジョン・レノンの葛藤はなんだったのかと寂しく思えるのです。品行方正でなかったけれど、少なくとも彼らは人に優しいアートをめざしたアーティストだったように思うのです。彼らの命と共に失ったのは、「人にやさしいアート」であり、「人にやさしい政治」なのです。

ほんならいきまひょか、<監獄ロック> 人はみんな死刑囚なんやから陽気にいきましょう!




州立刑務所で看守がパーティーを開き
監獄バンドがさっそく演奏を始めた
バンドはノリノリ、雰囲気も最高潮
囚入たちの大合唱が最高にイカしてる

踊ろうぜ、みんな踊ろうぜ
刑務所中のやつらが
監獄ロックに合わせて踊りだす

蜘蛛のマーフィーがサックスでテノールを吹けば
リトル・ジョーイがトロンボーンで対抗さ
イリノイ州出身のドラマーはドラムを叩きまくってた
バンドの連中ときたらみんな過激なやつばかり

*くり返し

囚人47号が3号にこう言った
「この中じゃおまえさんが一番いい男
どうだい、1曲やらないか
俺と監獄ロックを踊ろうぜ」

*くり返し

隅っこじゃ、サッド'サックが石の上に座り
一人でメソメソしてたっけ
看守が言ったよ
「ウジウジするな
相手がいなけりゃイスとでも踊るんだ!」

*くり返し

シフティ・ヘンリーがバッグスにつぶやいた
「今こそ脱獄のいいチャンス」
でもバッグスはすかさずこう言った
「それよりここで楽しもうぜ」

*くり返し

監獄ロックに合わせて踊りだす

×5回でフェード・アウト